伝統の「一歩奥」へ。ー HOTEL THE MITSUI KYOTO で解き明かす、美の設計

伝統の「一歩奥」へ。ー HOTEL THE MITSUI KYOTO で解き明かす、美の設計

自社のホテルブランド創出に向け、業界の解像度を高める宿泊体験シリーズ。

奈良・紫翠での「歴史への没入」を経て、次なる目的地として選んだのは、二条城の目の前に鎮座する「HOTEL THE MITSUI KYOTO(ホテル ザ 三井 京都)」でした。

制作したコンセプトムービーはこちら。

HOTEL THE MITSUI KYOTOは前々から興味を持っていて、今回ついに機会を作って訪れることができました。今回はその宿泊体験を記していきます。


1. マスターズドリームが繋いだ縁

私はサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」が好きで、中でもその最高峰である「マスターズドリーム」というラインを定期的に飲みます。好きすぎて、定期的に実家に箱で送りつけて親と一緒に飲んでいます。

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醸造家たちが効率を度外視し、ただ「多重奏で、濃密な味わい」を追求して作り上げたその液体には、クリエイターとしてのこだわりを感じます。

ある日、そのマスターズドリームのコンセプトムービーを眺めていたとき、吸い込まれるように美しいバーが目に留まりました。

伝統を感じる美しい門、三井の歴史、入念に計算されたであろう和モダンなデザイン。

それが、このホテルのイタリアン料理「FORNI(フォルニ)」に併設された「THE GARDEN BAR」だったんです。

「この空間を、実際に自分の肌で感じてみたい。この美しさは、一体どのような設計によって支えられているのか。」

一つのプロダクト(ビール)が、一つの空間(ホテル)へと人を動かす。これこそが、ブランドが持つべき「体験の連鎖」の理想形なのではないかと感じました。

これができるためには、体験設計全てにこだわりを持つ、つまりその裏にストーリーを置くのが大切。 ストーリーがあれば語れる。コンテンツになる。

そういった学びすらあった1本の動画でした。

2. 清水の喧騒を超えて、京都の「一歩奥」を覗き込む

ホテルへの移動中のタクシー運転手の方が語ってくれました。

今回訪問するHOTEL THE MITSUI KYOTOは、二条城の目の前、かつての三井総領家邸宅跡地という「文脈の塊」のような場所に建っている。

近くにあるのは、徳川家の栄華と終焉を見守ってきた二条城、そして石の配置一つで宇宙を表現しようとした龍安寺。

滞在者の様子を見ると、派手な演出や分かりやすい記号ではなく、静寂の中に潜む「設計者の意図」や「思想」に触れることに心を動かされる観光顧客が一定いることを身体感覚として理解できました。

正直に言えば、私はまだ「京都の真髄」を理解できているわけではありません。この街が1000年かけて積み上げてきた美学の正体を、過去含めて数回、それぞれ数日の滞在で語るなど傲慢ですらあります。

しかし、このホテルが纏う圧倒的な「本物」の空気に触れることで、その断片を掴めるのではないか。そんな期待を胸に、私はホテルに到着しました。

3. 梶井宮門:300年の時を跨ぐ「ゲート」の機能

ホテルの象徴である、300年以上の歴史を持つ「梶井宮門(かじいみやもん)」。

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この門は、単なる入り口ではなく、外界(現代の京都)と内界(三井の美意識)を分かつ「ゲート」として機能しているような、そんな印象を受けました。

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ロビーへと続くアプローチは、あえて天井が低く抑えられている。

アプローチには陶芸家・泉田之也氏による、土を幾層にも重ねたオブジェ『積層』が据えられており、まずは視線を足元や内側へと向けさせる。

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その少し暗がりの空間を抜けると、今度は天井が一段高くなったチェックインエリアが現れる。そしてその視線の先には、広大な中庭が広がっていました。

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この「低から高へ」「閉から開へ」という空間の抑揚が、ゲストの期待感を高めていく設計になっているのだという。

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私が気になったこと全てに回答をいただける一流のホテルマンが対応してくれたのもあり、全ての疑問が次々にクリアになりました。(ありがとうございます)

天気が良い日には、巨大なガラス扉がすべて開放される仕様に。

外から吹き込む春風が心地よく、中庭の柳が静かに靡く。 建物の中にいながら、外の空気と一体になる感覚。

そんな空間の洗礼を受けたあと、さらに嬉しいサプライズが待っていました。当初はデラックスルームの予約だったのですが、「ガーデンルーム(キング)」へと2段階のアップグレードをしてくれたんです。

部屋番号は「365」。 1年の日数をそのまま表したようなその数字に、不思議な縁を感じずにはいられませんでした。

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扉を開けた瞬間に広がっていたのは、まさに三井の庭を独り占めできるような贅沢な空間。窓の外に広がる緑、計算されたインテリア。

(メモリーカードのデータ破損で写真が少ない…)

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365という数字を眺めながら、「1年に一度は、自分を整えるためにここに戻ってきたい」と素直に思いました。

ここは単なる宿泊先ではなく、自分にとって大切な「思い出の場所」になりました。

4. THE GARDEN BAR:マスターズドリームとの再会

一息ついたあと、今回の滞在のきっかけにもなった「THE GARDEN BAR」へ向かいました。

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カウンターに座り、マスターズドリームを注文する。コンセプトムービーで何度も見たあの空間で、実際にグラスを傾ける時間は格別でした。

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また、驚いたのは、夜のロビーの表情。

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昼間の開放感とは一転し、照明を落とした空間は、上品で濃密な空気が漂っていました。

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庭園の水面に映る光や、闇に浮かび上がる庭園のシルエット。 この昼夜の対比を味わえるのも、ここに滞在したからこその特権。

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5. サーマルスプリング:静寂と水に溶ける時間

夜、地下へと続く階段を降り、サーマルスプリングへ。 そこは、京都の地下から湧き出る天然温泉を水着で楽しむ、圧倒的な静寂の空間です。

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実際に体験して感じたこととしては、私自身ホテルを建設・デザインするとなった際に、予算がある程度手元にあろうが、このような施設を作るのは想像もしないだろうな、ということ。

つまり、本施設の設計者や経営者は、そもそもこの体験が想像できている=これまでの人生の経験を通じた体験の引き出しの数が多いのだと痛感しました。

Webサイトでこのサーマルスプリングの空間を見ていた時には、正直「この施設必要か?」と思っていましたが、最悪なくても良いものを"あってよかった"と思える最高の思い出を作ることが、ラグジュアリー体験の本質なのだと実感させられました。

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仄暗い照明の中に、天井から落ちる光が水面に反射し、かすかな水音だけが響いている。 東京で疲弊している脳が、温かな水に溶けていくような感覚を覚える。

過剰な装飾を排し、石と水と光だけで構成されたその場所は、まさに「感覚をフラットにする」ための装置でした。

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充実した1日を経て、眠りにつきました。(よく眠れた)

6. 龍安寺への再訪

翌日は、ホテルからほど近い場所にある龍安寺へと足を運びました。

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私事ではありますが、龍安寺に来ている記憶があったので親に聞いてみたところ、幼少期の写真が親から送られてきました。26年前の写真を見ても、緑や石階段の様子は全く変わらずに美しさを感じます。

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清水寺のような華やかさとは違う、削ぎ落とされた石庭の美しさに触れる。ここでも「一歩奥にある京都」を感じました。

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朝散策していると、近くに住んでいるであろう方が、龍安寺の中を緑を見ながらジョギングをしていました。なんて粋な朝の時間の使い方なのだろうと羨ましさすら感じたのを今でも覚えています。

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まとめ:「感性の解像度」を上げる場所

HOTEL THE MITSUI KYOTOでの滞在を振り返ると、それは「高級の設備」を享受する以上の意味を持っていました。

マスターズドリームという一つの嗜好から始まり、二条城や龍安寺という「京都の一歩奥」を覗き込む。その過程で、素敵な宿泊空間に身を置き、自分の感性がどう変化するかを客観的に観察する。

自社ブランドを創るにあたって、今回得た最大のヒントは、「ゲストにどんな素晴らしい景色を見せるか」ではなく、「その場所を去る時、ゲストが自分自身の内面をどう美しく書き換えられているか」という体験設計の視点。

そして、何に最も感動したかというと、これを外資系ではなく日系企業の三井不動産がプロデュースしているという点だ。

例えば、ここに「ザ・リッツ・カールトン・京都」を作ることもできたかもしれない。だが、そうではなく三井のブランドとして、マリオットグループのThe luxury collectionとして運営を開始するという決断をした。

ラグジュアリーホテル産業は日本企業としてまだまだ伸び代がある。 それをこのホテル ザ ミツイというブランドで、先駆者として経済価値を実現していくという覚悟を感じた。

"なぜマリオットグループなのか"という私の質問に対するホテルマンの方の回答はこうだった。

チェックインを担当する方が、ホテルブランドの経営戦略を説明できる。 そのようなレベルのサービスを一部の人は常に求めているのかもしれない。

このような視座とサービスレベルで産業を作ることができるのは本当に面白いのだろうなと感じました。

引き続き、いろんな宿泊場所を訪れ、自身の引き出しを増やしていこうと思います。

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